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人生の大切なことは全て暁星国際の寮で学びました。第11回

川崎市立多摩病院 総合診療内科   副部長
川崎市立多摩病院 臨床研修センター 副センター長
聖マリアンナ医科大学 総合診療内科 講師・医局長
西迫 尚(暁星国際学園12期生)

~寮生活の思い出と現在の仕事へのつながり
私が暁星国際学園に入学したのは1987年、年号が変わる前の昭和62年でした。当時まだ、木更津には東京湾アクアラインも、高速道路も無かった頃でした。布団や入浴具、文房具などの真新しい生活用品とともに、入学入寮した日のことは今でも鮮明に覚えております。当初は修学旅行気分でワクワクした、霽れの日々として感じられた寮生活も、2年3年とすぎる頃には単調な褻の時間となりました。しかしそこでの時間こそ、他の中学生活では経験できないような、幼いながらも煩瑣な人間関係を構築する貴重な社会経験を積む機会となったのです。仕事においては、内外の優秀な人たちと様々な関わりを持たせていただき、常に良い刺激をいただいております。大学の教員として後進の指導にあたり、また講座の医局長及び診療科の責任者として種々のマネジメントに携わらせていただく立場となりました。自分の中学や大学受験の際には、正直掠りもしなかったような、名だたる名門校出身の方々のキャリアデザインを担わせていただいており、ありがたいことと感じております。正直、大学卒業時にはそのような自分の姿を想像もしておりませんでした。今の仕事において自分の求められる能力は、各人の心理を感取し、全体を俯瞰した上で最良の選択を考え、調整を図ることです。そしてこれを遂行する技術は、だれに教わったわけでもなく、ほとんどすべて中学高校の寮生活の中で鍛え上げられたものであると、今改めて実感しております。

~寮生活を送る後輩たち、そして入寮を考えている皆様へ
我々の頃から現在まで変わらないことでありますが、中学・高校の対外的な評価は、大学受験に対するアウトカムのみで語られることが多いように思います。しかし、中学高校の多感な時期は、その後の長い人生を自らの脚で生きていくための強さを形作る重要な時期でもあるのです。受験で結果を出すことは重要なことであり、その結果は人生の大きなターニングポイントになります。
しかし、受験勉強で最も大切なことは、あくまでも結果を出すためにどうしたら良いかを自ら考え、それを実行する能力を育むことです。
またそれ以前に、受験勉強=勉強ではないという当たり前のことはわかっていなければなりません。幸い暁星国際の先生方は、薄っぺらい受験テクニックではなく学問の本質を教え込んでくださる先生ばかりでした。だからこそ後述しますが、無謀とも思える文系から医学部への転身、整形外科から内科への転身もスムーズに実現できたのだと大変感謝しております。そして学業を超えて、寮生活から得られるものが非常に大きく、一生の財産となること、それをいずれ実感していただければと思います。
在校中私立文系コースであった私は、高校卒業とともに進路を変え、医学部を目指し理系としての受験勉強をゼロからスタートしました。幸いにして翌年、入学することができましたが、文系に戻ることもできないという背水の陣であったために、非常に強いプレッシャーから精神的にかなり追い詰められた記憶があります。またその後も、卒業直前に母校を離れ、ハードな研修で知られる病院に突然就職を決めてしまったり、卒業後10年目にして整形外科から畑違いの内科に専門診療科を変えるなど、要所要所で前例の無いような選択ばかりをしてまいりました。今思えば、そのような大胆な決断ができていたのも、寮生活の中で揉まれた経験をベースにした粘り強さが自分の中に育まれていたからでしょう。
アクアラインや高速道路ができた現在、矢那の周辺も様変わりしております。かつてフェリーで1時間以上かかった航路は、わずか15分で渡り切ってしまいます。最近私は木更津を訪れた際、学校周辺を車で巡るのがひそかな楽しみになっております。6年間生活し続けた田舎の風景が、様変わりした中でもところどころに残されており、それらを見つけた際には20年の時を超えてあの蒼き日々の感覚が詳らかに呼覚まされます。そしてそのたびに自らの原点を見つめなおし、現在の生活を振り返ることができます。そのような体験は寮生活を経験したものにしか持てないことだと思います。18歳で卒業してから気づけば24年の年月が流れており、こんな私も家庭を持ち、すでに学生よりも社会人になってからの時間の方が長くなりました。そして最近、同窓会が再開されたことをきっかけに、かつて一緒に生活をしてきた同級生たちと再会する機会を多くもてるようになりました。一般的な学園生活よりも数倍長い時間を共に過ごした多くの仲間との再会は、他では得られないものです。暁星国際学園への入学を考えていらっしゃる皆様、卒業後の長い人生の中で必ず役立つであろう寮生活を是非、選択肢として考えていただければと思います。
これからも頑張ってください!

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